栄養士の会員数8万人

みんな使ってる? 栄養指導におけるMCT利用の実態を調査

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昨今メディアなどで話題にのぼることの多いMCT(中鎖脂肪酸)。実際に栄養士が働く現場ではどのような使い方をされているのでしょうか? エイチエ会員約600名を対象に行ったアンケートで、その実態を探ってみました。

半数の栄養士が現場で活用中

回答者の職場環境は7割弱が医療機関や介護施設と、高齢者の割合が高い施設が多くを占めていました。MCTの利用については半数以下にとどまっていますが、効果や作用、活用方法については6割以上の方が「ある程度知っている」との回答で、認知度は高いことがうかがえます。

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どんなことに使ってる?

では実際の利用について見てみましょう。6割以上の現場で高齢者の低栄養対策に活用されていることがわかります。サルコペニア対策にも3割の回答があり、フレイルと同様サルコペニアのリスク要因のひとつが低栄養であることを考えると、高齢者の栄養補給を目的とした利用が大多数と言えるでしょう。一方、メディアでも話題となっている認知症対策やダイエットについては、1割前後にとどまっています。

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MCTの特性と活用の歴史をおさらい

MCTの主成分である中鎖脂肪酸は、ココナッツや母乳などに含まれる天然成分で、素早く分解されてエネルギーとなる特長があります。MCTは他の油と代謝経路が異なり、門脈を経由して直接肝臓に運ばれエネルギーに分解されます。そのため、リンパ管や静脈を通って脂肪組織や筋肉などに運ばれる一般の油と比較すると、4~5倍も速く分解され、エネルギーになります。

この特性を活かし、医療機関では1970年代から未熟児や術後の回復時、熱傷や消化器系疾患などの栄養補給のために活用されてきました。現在も上記アンケート結果にあるように、腎臓病やCOPDなど、たくさんのエネルギーを必要とする疾患の食事療法として、また、回復のために必要なエネルギーを補う手段として利用されています。

その他、特に欧米では小児てんかんの食事療法(ケトン食)に利用されており、発作の頻度を抑える効果が確認されています。また、近年ではケトン食ががんの成長を抑える可能性についても報告されるなど、治療目的での利用も注目されています。

幅広い分野で研究が進むMCT

上記のように医療現場で活用されてきたMCTですが、病院や施設で治療の一環として使われるのは特別用途食品として商品化されているものも多く、一般家庭で気軽に利用できるものではありませんでした。しかし、一般の食用油として簡単に手に入るようになった現在、活用の幅が広がりつつあります。ココナッツオイルは中鎖脂肪酸を60%ほど含み、甘い香りが特徴の食用油です。中鎖脂肪酸100%のMCTオイルは、無味無臭で普段の食事にも気軽に取り入れることができます。身近な存在となったMCTは医療現場を超え、幅広い用途で有効性の研究が進んでいます。具体例を見てみましょう。

高齢者の栄養対策
高齢化が社会問題となっている日本では、特に健康寿命を延ばす取り組みが重要です。栄養不足になりがちな高齢者への栄養補給のために、家庭でも簡単に取り組めるのがMCTオイルの利用です。
アルツハイマー型認知症対策
栄養問題と同じく、高齢化が進み増加の一途をたどっているのが認知症です。中でもアルツハイマー型認知症は、脳のエネルギー源である糖を利用する機能が低下することがわかってきました。糖に代わるエネルギー源としてケトン体を代用することで、認知機能の改善が期待できるため、一般の油脂と比べて効率的にケトン体を作る特長があるMCTを摂取することの有効性が研究されています。
スポーツ時の持久力向上
フルマラソンなど膨大なエネルギーを必要とするスポーツでは、通常身体に蓄積されている糖質だけでは賄いきれません。糖にプラスするエネルギー源として、MCTを摂取することで、持久力の向上が期待されています。
生活習慣病予防
他の脂肪酸に比べて代謝が速く脂肪になりにくいMCTは、肥満の予防に効果的と言われています。また、MCTを継続して摂ることで、MCTケトン体をつくりやすい体質になることから、脂肪燃焼効果についても期待されています。
※糖尿病の患者さんの場合には糖尿病ケトアシドーシスを起こす危険性があるため、使用については医師に相談してください。

アンケートの上位にきていた高齢者の栄養対策や、浸透率が低めだった認知症対策についてMCTの研究者と栄養士の座談会を開催予定です。次回記事ではその様子を紹介します。