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栄養士の生の声をお届け! MCT(中鎖脂肪酸)セミナーレポート

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先日実施したエイチエ会員へのアンケートでは、MCT(中鎖脂肪酸)を活用したことがある人は全体の半数以下という結果でした。そこで、エイチエでは栄養管理におけるMCTの重要性についてのセミナーを開催。さまざまな現場で働く栄養士が参加し、MCTへの理解を深めました。当日の様子を紹介します。

多機能なMCTについて最新の研究成果を詳しく解説

日清オイリオグループ㈱中央研究所でMCTの健康機能を研究している、渡邉慎二博士による講演では、MCTの概要から臨床応用、高齢者への活用、認知症に対するアプローチについてなど、盛りだくさんの内容を事例を交えて説明。特に好評だったのが、下図の「生理作用」に関する解説です。MCTは摂取後素早く分解されエネルギーになりやすいことが知られていますが、代謝亢進や筋量増加、血中アルブミンの上昇にも有効であるという研究結果が報告されています。また、注目のグレリンについてなど、最新の話題も紹介。グレリンは胃から出るホルモンで、成長ホルモン分泌や食欲亢進に関わる重要な役割を果たしており、MCTを摂取すると、このグレリンが活性化することがわかってきました。

MCTの栄養学的成長出典:日清オイリオグループ㈱譲渡資料より

MCTによる『中高年の肥満予防』と『高齢者の低栄養予防』出典:日清オイリオグループ㈱譲渡資料より

また、「低栄養対策と肥満予防の両方に活用できるのは矛盾するのでは?」という一般的な疑問についてもわかりやすく解説。MCTはエネルギーとして利用され、脂肪がつきにくい油であるとともに、代謝亢進作用により体に蓄積された脂質が代謝しやすい体質になるため、いつもの食事のカロリーを減らし、そのぶんMCTを摂取することで脂肪を減らす=肥満予防に活用できます。一方、低栄養の予防は「太る」ということではなく、MCTをプラスすることでエネルギーを補給すると同時に、代謝亢進作用でたんぱく・筋合成が促進されて筋量と血中アルブミンが増加して健康的な体になるということです。

講義を受けた栄養士からの反響は?

エイチエ会員へのアンケートでは、MCTを活用したことのある人の用途のうち、治療目的の食事療法を除くと大多数が「高齢者の栄養補給やサルコペニア対策」となっており、認知症対策やダイエット目的の活用はごく少数でした。今回のセミナーで改めて高齢者へのMCTの有効性を確認するとともに、その他用途の活用もイメージできるようになりました。多種多様な現場に勤める参加者の声を見てみましょう。

低栄養、サルコペニア対策
「脂肪ではなく、筋肉で体重を増やしていけるのはすごい。高齢者だけでなく身体障碍者の方にも有効だと感じました。自身で体位交換ができないと、臀部の筋肉も落ちやすいため、褥瘡(じょくそう)ができやすかったり、適正なエネルギー確保と筋肉の維持が難しい状態で、体がやせ細ってしまう方も多いです。筋肉が増えれば褥瘡予防にもつながります。身体が動かせないぶん肥満傾向の方もいるので、そういう方にもよいですね。今までは”エネルギーになりやすいから脂肪としてつきにくい”程度だった知識の幅が広がりました」
認知症対策
「脳がエネルギー不足になりがちなアルツハイマー型認知症で、MCT摂取によって作られるケトン体を糖の代替エネルギーとして活用する研究結果は参考になりました。重度患者に表情が出てきたり、全介助が部分介助になるなど予想以上の結果でした。健常高齢者の記憶力向上の資料もあり、積極的に摂るべき油と感じています。重度になると食事も難しくなるため、口元にもっていくと食べてもらえるゼリー状の商品は便利ですね」
肥満予防
「飽和脂肪酸に分類されるので、体脂肪に直結するイメージがありましたが、長鎖脂肪酸とは代謝経路が全く異なり、カロリーが同じであってもダイエットやメタボ対策にも有効で、まるで油ではないみたい!と目から鱗が落ちました。私は事業所給食勤務で利用者に中年層が多く、特定保健指導の対象者もいます。コストと相談しながら普段使っている油をMCTに換えて、利用者を脂質代謝しやすい体質に改善していきたいです」
スポーツでの活用
「今までは持久力アップへの効果というイメージでしたが、 “スタミナ源であるグリコーゲンの蓄積を速め、疲労回復を高める効果も期待できる”というお話を聞き、 運動後の効率的な疲労回復に活用したいと考えました。筋肉を減らさず体脂肪を減少させる研究結果もあり、 練習や試合会場にも手軽に持参できるスティックゼリータイプの商品もあるようなので、今後色々な場面で取り入れ、スポーツ選手のパフォーマンスアップに貢献したいです」

MCTオイル活用の注意点は?

「高齢者含むあらゆる世代に有効なだけでなく、健常/疾患ありな様々な方にメリットのある油」「必須脂肪酸と同様に、みんなに必要な脂肪酸と言ってもいいのでは?」などの意見が出た多機能なMCTにも、いくつかの注意事項があります。食べ合わせの制限はありませんが、肥満傾向にある人は全体の摂取カロリーをきちんと管理しましょう。また、一型糖尿病と重篤な肝機能障害の場合など、疾患によっては使えない場合があります。逆に肝機能障害が軽度の場合はMCTが良い影響を与える場合もありますので、疾患がある場合は医師に相談しましょう。